『ブレーキの上手な踏み方』

自動車用ブレーキシステムは3種類に大別することができます。
(1)油圧式…一般的な乗用車のほとんどが採用している
(2)エアー式…大型貨物用トラックに採用されている
(3)機械式…駐車ブレーキや産業機械用に採用されている
今回は、私達が一番身近に使用しており、もはや日常生活にとって無くてはなら
ない存在になってしまった普通乗用車のメインブレーキを取り上げ、如何に安全
に、快適に、長持ちする『ブレーキの上手な踏み方』について探求してみました。

まず、油圧式ブレーキの簡単な説明をいたします。
ブレーキペタルを踏むとパイプの中のブレーキフルード(オイル)がマスター
シリンダー(加圧装置)で加圧されタイヤの内側に取り付けられたディスクブレ
ーキやドラムブレーキに伝わり制動力が発生して油圧式ブレーキが成立します。

これはご存知の「パスカルの原理」を利用しており、[流体の一部に圧力を加え
ると、その圧力は流体内の全ての部分に同じ大きさで伝わる]ことをマスター
シリンダーとブレーキホィールシリンダーに応用しています。
昨今の自動車にはより安全に、快適に止める為にいくつかの装置が取り付けられ
ています。

(1)ブレーキブースター…エンジンの吸入負圧を利用して、踏力を増大させる
   装置。
(2)プロポーショニングバルブ…ある一定以上の踏力を超えるとバルブが閉じ
   てリヤーへの油圧をカットしてリヤーロックを防止する装置。
(3)ABS…アンチロックブレーキシステム、文字どうりタイヤ部分に取り付
   けられたセンサーによりタイヤのロック寸前に加圧力を下げてロックを防
   止する装置。
ブレーキの構造についてすこし説明させていただきましたが、前述のように
安全に車を止める機構は全ての乗用車に設置、もしくは設定されております。
ニュースや新聞紙上を賑わす交通事故件数を見ても安全に車を止めるには
まだまだドライバーのテクニック(経験や知識)が必要不可欠です。
そこで私達の廻りにおりますプロのテクニックを盗み見しながら『ブレーキ
の上手な踏み方』について検証いたします。

アケボノテック(株)
曙ブレーキ工業鰍ナ保有するテストコースでブレーキに関するあらゆる試験や
自動車の各種性能試験を行っています。そこのテストドライバーから聞き込みを
してみました。
テストコース
 基本諸元

面積:75.6 ha
(東京DOMEの16倍)

全周:3016 m
最大バンク角:   44度
アケボノテック.テストドライバーからのアドバイス
(1)ブレーキ減速度 0.1G〜0.4G程度は、自動車ブレーキ試験で常に行うも
   のなのでシートポジション、運転姿勢は走る前に必ず確認しています。
(2)基本的なブレーキ操作方法は、腰をアンカーに身体で踏むような感じで行
   うと良い。
(3)自動車ブレーキ試験中は腰を痛めるのでコルセットをして運転している。
(4)私有車は、ABS付きなのでブレーキは強く踏んでいる。但し、止まる寸
   前 0.1〜0.2秒ブレーキペダル踏力を緩めるようにして止まれると、前のめりになる
   急ブレーキを避けられる。
2
皆さん、「ジムカーナ」ってご存知ですか?,,,
広場や駐車場を利用して工事中標示のパイロン等でコースをつくり、1台ずつ
タイムトライアルする競技です。レースは2回走り、速い方のタイムで順位を
決めるものです。
曙ブレーキ工業且ミ内で「ジムカーナ」、「ダートトライアル」を中心に活動
しているモータースポーツクラブがあります。

AMSS(AKEBONO MOTOR SPORT STAFF)
クラブ専用車を持ち、クラブメンバーが数々の RACE&EVENT にエント
リーし、輝かしい戦歴を残しております。

『ブレーキの上手な踏み方』の方向とすこし違うかも知れませんが、自由に
車を操るレースドライバーのテクニックから何かヒントを見つけられないか?
そのテクニックに迫ってみました。







(1)ジムカーナはサイドターン(サイドブレーキを使った曲がり方)を使う場
   面が多いことから、リヤーブレーキの効くことがまず大事なので効きの良
   いPAD選びから行います。
(2)最短距離で車を止めるにはタイヤがキュキュとスキール音がするロック点
   ギリギリまでブレーキを踏み込むとタイヤの最大グリップ力を引き出す事
   が出来る。
(3)コーナーで車を曲げる為のブレーキ操作は、ブレーキングすると車がフロ
   ント荷重になる。この状態を残しながらステアリング(ハンドル)を徐々
   に切って行くとフロントの応答性・回頭性が良くなりコーナーターンイン
   のスピードを上げることができる。
(4)レース用のPADは低温時の効きを犠牲にしているのでフォーメーション
   (予行走行)の時、アクセル全開のまま左足でブレーキペダルを数回踏み、
   ある程度温度を上げて効きやコントロール性を発揮させている。
(5)コーナーに入る時、車の姿勢変化がポイントになりますのでブレーキング
   ドリフト(車輌制動操舵)は欠かせない、これはタイヤをロックさせない
   ブレーキの踏み方とフロントPADとリヤーPADの効きを考えたPAD
   選びが勝敗を決める。
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走りを追求しているレースドライバーの人達はブレーキも走りのひとつと考えて
いる印象を受けたと思います。あるレーサーは「ブレーキング争いを制する者は
レースに勝てる」「ブレーキングは走りにマッチしたPAD選びが大事」と
言い切っております。

話題をすこし日常生活に戻しまして、堅実な走りの人達の中からブレーキングを
見極めたいとおもいます。社内におります役員専属の運転手さんからその筋の
裏ワザを盗みたいと試みました。
(1)多車線道路では右折車やタクシーを避けて、通常左側走行に心掛ける。
(2)同乗者へのマナーとしてコップの水が零れない発進、走行、停車をする。
(3)肩の力を抜くハンドリングとして八の字は止めて、逆八の字にしている。
(4)急ブレーキは同乗者に不快感を与えるので、常に早めのブレーキ操作を
   行う。
(5)オートマチック車でのPレンジシフトは遊びの部分が大きい為、停車、特に斜面
   停車等では先にハンドブレーキを操作してからPレンジシフトにしてカッ
   クン停車防止をする。
(6)ABS装着車は各自動車メーカーによって効き具合が微妙に違うので、事
   前に空車時等により急ブレーキを行って体感する。
(7)俗に云うカックンブレーキ防止として、ブレーキ操作時、止まる寸前に
   すこしブレーキ力を「ヌク」操作(ペタル踏力弱める)をする。
(8)発進操作は同様にブレーキ操作を解除後「ひと呼吸」してからアクスル
   操作をするとカックン発進にならない。
(9)同乗者がいる走行は常に車のスピードに合わせた車間距離維持と3〜4台
   先のストップランプが確認できるように運転して急ブレーキ防止する。
(10)冬場の凍結、雪道等は、シフトダウンしてエンジンブレーキを効かせてか
   らフットブレーキ操作をしてスリップトラブルを避け、発進時は逆にシフ
   トアップして低トルク発車にする。
(11)ドライビングテクニック等で紹介されている左足ブレーキは操作が速く楽
   なようだが、勘違いによる誤操作の原因になりやすいので絶対に行わない。
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やはりプロドライバーと云われる人達の実績から養われた「ブレーキングテク
ニック」には説得力があります。
デートやドライブには是非とも取り入れたい「コップの水が零れない発進、走行、
停車」のテクニックで「信頼」をチョコット貰えそうです。

少ないジャンルで偏るかも知れませんが今回の目指す「ブレーキの上手な踏み
方」について解析いたしますとひとつの方向が見えてきます。
皆様もほとんど気が付かれていると思いますが、まずは、
(1)基本的な運転姿勢…必ずシートポジションを確認する。
(2)ブレーキングマナー…コップの水が零れないブレーキ操作。
(3)ポストブレーキ…自分の走りを知り、そのフィーリングに合ったPADを
選んで止めることです。

(1)や(2)は既に「知っているよ!」「常識ダ−!!」とおっしゃる方が
大半だと思います。そんな中で『ポストブレーキ』に注目してください、自分の
走りを他人から聞いた事がありますか? 自分の走りを見極めることが『ブレー
キの上手な踏み方』への近道であり、それにはそのフィーリングに合うPADは
是非とも選ばなければなりません。
如何に安全に、快適に、長持ちする『ブレーキの上手な踏み方』こそ、私達が
望む『ポストブレーキ』ではないでしょうか。

もし、お時間が取れましたらもう一度、TOPページに戻りご自分のPADを
選ばれることをお勧めします。
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